2016/8/25発売の週刊ファミ通9月8日号No.1447に掲載されている
3周年吉田直樹氏ロングインタビュー企画 「ファミ通が吉Pに物申す!」の
全10問と吉田Pの回答をまとめました。


1. 初心者の館が実装されたが、基本的なスキル回しができていない人がいる。
練習する場をシステム内で用意できないか


ゲームだから正解はなく、足りない人の分を補ったり、アドバイスができる気楽さでありたい。
しかし、それがし難いほどジョブ性能を引き出すための練度が高くなりPS格差が激しくなっているため、
各ジョブの操作難易度を次の拡張パッケージで大きく変えるつもり

工夫する余地のある方が面白いという認識だが、バフ管理が増えすぎてしまったため、
4.0では管理するものを減らし、ジョブ特性がまっすぐ出せるようにする。
トップ層は楽になりすぎと感じるかもしれない。
レベル60時点での触り心地が変わるジョブもあるかもしれない。
詳しくは今後公開する拡張情報の中で。


2. AoE避けなどでキャスター(特に黒)の移動のリスクが高い点についてどう考えているか

黒は攻撃力が高くその分詠唱できない時のリスクが高いというのがコンセプトなので意図通りではある。
バトルをデザインする担当者は複数人いるので、
コンテンツによってはエノキアンの更新をする暇もないということがある。
極ニーズのフェーズ移行については直接文句を言ったが、最後はうまくやる方法を考えるしかない。

各自が自分のDPSにこだわるが、作っている側は平均可した「パーティ力」でバランスを考えている
レイドもPvPも強いPTは個々のDPSよりも、戦闘不能にならなかったり、カバーが上手い。
コンテンツによってジョブごとに得手不得手があるが、チームで勝利することの方が大事。

近接もオートアタックの維持でPS差があるが、このあたりも手を入れたいと考えている


3. エンドコンテンツは「誰しもが挑戦するものではない」という位置づけだが、
報酬など多くの人が挑戦したいと思える構造になっている点についてどう考えているか


報酬のために行かなければならないと考えるのは日本のプレイヤーに多い。
しかし、報酬のためというよりそこにコンテンツがあるから行くという傾向の方が強い。
目の前にあるものはクリアしなければならないという強迫観念が日本の方が強く、
レイドや極蛮神のクリア率は日本が他地域の3倍くらい高いこともある。

みんながクリアしているから、流行っているからという理由で行くという日本独特の感覚。
最新コンテンツから1ヶ月遅れくらいでレイドプレイヤーとカジュアル層のIL差は近づき、
武器のILもパッチシリーズ内では5しか差がない。
レイドをやっていないと肩身が狭いという感じはできればなくしたい。

日本のオンラインゲーム市場では高難易度レイドが初経験ということも大きいかもしれない。
攻略のためにさまざまな努力が必要だが、超えたときにはものすごく興奮でき、
FF14はそういう遊びなんだというイメージができ上がっている。
さらに幅を広げるためにコンテンツの横展開は課題だと考えている。


4. アレキ零式は正直なところ難しすぎると思う。今後のレイド方針について聞かせてほしい

起動編はDPSチェックに関してやりすぎ、律動編は動かされることで難易度が厳しくなった。
律動編はレベル50キャップで当時のスキル回しであればクリア者が格段に増えていたと思う
データやログを解析すると、「ギミック処理をしながらかつレベル60のスキル回しを実行する」
ことが大きな格差を生んでいる。
管理・維持するものが多く、かつフェーズや敵の攻撃で途切れ、臨機応変さの要求が高くなってしまった。
バハムートでも難しいギミックはあったが、スキル回しの難易度差がコンテンツ難度に直結してしまった。

3.X中にはスキル回しを変更するのは難しいので、
次のアレキ零式ではコンテンツ側の難度を下げることで調整する
歯応えの部分は残すつもりだが、落としどころを見つけようと四苦八苦している。


5. ジョブバランスはすばらしいが、それでも戦士と学者は少し抜けていると感じる。どのような認識か

少しではなく、特徴において頭ひとつ抜けている。
単体性能ではなく、やれることのマルチさでの性能が飛びぬけている。
どんな構成でも戦士・学者はシチュエーションに合わせやすく、
もっとも役割が確保されている
という状態。
戦士もそうだが、学者は他ジョブに比べてPSを許容する懐の深さがあり、そこが悩ましい。

3.Xシリーズ中にはこの2ジョブを狙い撃つかのような調整は予定していない
拡張パッケージで新アクションを含めた全体調整を行い、その中で全体をならす予定。
基本的には他ジョブを上げることで追いつく形にしたいが、
システム的、ペット的な強さが絡んでいるため慎重にと思っている。


6. レイドレースを見るのが好きだが、クリア状況をLodestoneで逐一確認できるようにならないか

トップチームもそこまで監視されたくはないと思う。
World1stを狙う人たちはクリア自体だけではなくクリア方法にもこだわることが多い
バグでないかどうか、正攻法という意識もあるように見受けられる。
公式がレイドの早期攻略を推奨しているように見えるので、
プロデューサーレターでポストするくらいにしたい。
仮に公式でクリア状況を確認できるようにしても、ハラハラしたネット上でのやり取りには劣ると思う。


7. クリや意思は効果の違いをなかなか感じにくい。また、サブステの数値が大きくなったため、
命中過多になったり命中を維持するために装備を更新できなくなったりする。方針を聞かせてほしい


PS差もあるうえにパラメータビルドも入るとさらに敷居が高くなってしまうため、
これ以上に差をつける要素は入れないつもり。
パラメータの効きが悪いものに関しては4.0で調整すると思う。
命中に関しては今も議論中。
コンテンツに遊ぶことに集中してほしいのでシンプルになる。

トップ層と差が開きすぎないよう調整していく。
Lv50→60でこれまでと全く違ったプレイ感覚になったと思うが、
次はそこまで極端にならない範囲に落ち着けるつもり。


8. コンテンツで「塔」と呼ばれる謎の柱が出現するが、あれはどういう設定で
なぜプレイヤーはエリア内に入らないといけないのか


初登場は真成4層、基本的には「楔」の意味。
あれを踏んで押し込まないとモンスター自身が超絶パワーアップしてしまうため、
誰かがそのエネルギーを1段押し上げるのをジャマしましょう
という考え方で作られたギミック。
おそらくアラグなんだろうね、という話でスタートした。

同時に、極蛮神開発スタッフに「いい加減ギミック用のアイコンを統一して」と口うるさく言っていた。
同じ性質のギミックが違う見た目になっているのはアンフェアになるため。
この話を基本に、以降のコンテンツにも塔マーカーが使われている。

シェアダメージや狙われたときのマーカーも同様に統一されてきている。
1つのコンテンツを攻略したらそれが次回に活かされないと毎回ストレスになる。
これまでにない新しいギミックなら新しいマーカーを作るというイメージ。


9. エンドコンテンツ制作チームは何人構成で、ギミックはどのようにつくられているのか

制作パターンは全員大体同じ。
まずコンテンツの担当者が紙資料を作る。前半後半パート、何をやりたいかのかの企画段階。
それぞれのフェーズ数、ギミック、開始から何分経過で全滅など。
その時点で難しすぎる、技が多すぎるなどあればそぎ落とし修正。
チェック後に発注となり、モンスターやアニメーションチームがボスの動きを作る。
エフェクトチームは必要な技に対して固有のエフェクトを作っていく。
リリースまでプログラマー1名が専属担当として張り付き、企画担当者とタッグを組む。
徐々に作り上げていき、全実装がおおむね終わると一旦デバッグ。
ある程度バグが取れたら、腕利きの開発者を集めて、
もっとも重要な段階である最終バランス用のテストプレイが始まる


テストプレイに参加するメンバーは担当者からギミックの説明を受けてプレイに入る。
1コンテンツ当たりの調整期間はおよそ5~7日くらい
例えば偶数パッチではレイドのノーマルと零式で8個+蛮神で9個のボス調整となる。
まずはボスの行動を完璧に把握するために完全無敵の状態で通しでプレイし、
担当者の示す解法が破綻していないか確認。
無敵にする理由は時間短縮。その都度戦闘不能になっていてはチェックにならないため。

次は完全無敵状態ではなく「ダメージは受けるもののHPが0になると即時満タンになる」状態で、
回復負荷が高すぎないか、DPSチェックが厳しすぎないか等をチェック。
クリアできた後は通常と同じ戦闘不能のリスクがある状態で最終チェックを行う。
緊張感を持った状態でその緊張に耐えながらこれをクリアできるのか、
どの程度までなら建て直せるのか確認。

誤解されているようだが、きちんと公開サーバーと同じ環境でクリアを目指してチェックしている
クリアした後、各フェーズのDPSチェックやヒール量が適切だったか、
自分たちより上手い早期攻略組に歯応えがあるかを最終議論。
そこでクリア目標指数としてDPS総チェックを5%上げたり
時間切れ猶予を15秒削るなどギリギリの調整をする


ベテラン担当者ほど企画の段階で秒単位の行動を考えている。
アビリティのリキャストは60、90、180秒が多いのでそれを意識して作っている。
担当者もプレイヤーの1人なので実際に経験したことを加味して作る。
バトルコンテンツ担当は全員自分で月額課金し、プライベートキャラクターできちんとクリアを目指している。
リリースしたものと実際のプレイヤーの努力や戦術がどこまで合致するかわかり、次の制作に活かせる。


10. 敵の物理/魔法/無属性の3種類の攻撃を見た目でわかるようにするつもりはないか

かなり苦しい。最初は技ごとのイメージ発注が行われ、できるだけ見た目と属性を合わせている。
しかしバランス調整が始まるとどうしても「特定のジョブの特定アクションで回避が容易である」
というシチュエーションが発見されることがある

そのままリリースすると「必須ジョブ化」の懸念がある場合、属性を変更することがある。
最終チェックを待ってからエフェクトを割り当てるのはスケジュール的に破綻する。
その攻撃がどの属性にあたるのかはジョブバランスを行ううえでの最後の砦でもある