PAX West 2019でのインタビュー記事が海外メディアHardcore Gamerでも掲載されていました。
メインシナリオライター石川夏子さんとリードアーティスト鈴木健夫さんが、漆黒のストーリーやアートの開発についてお話をされています。
主な内容を翻訳しました。
Hardcore Gamer - PAX West 2019: FFXIV Scenario Writer, Art Lead Discuss Work on Shadowbringers
- 過去の拡張と比較して、漆黒の製作はいかがでしたか?
石川:
漆黒は3つ目の拡張で、過去の2つに比べて重要でないとか大きくないとはプレイヤーに感じさせたくなかったので、全力を尽くしました。
そのため漆黒に盛り込みたかったことがたくさんありました。
拡張でやりたいことのボリュームだけでもとにかく膨大で大変な作業でしたが、みんなすごくがんばりました。
鈴木:
アート面では、プレイヤー種族の追加が大きかったです。
紅蓮では新種族の追加がありませんでしたが、漆黒では2つの新しい種族を追加することができました。
ゲーム内の環境や背景については、過去の拡張ではマウントで空が飛べるようになったり、水中に潜ることができるようになったり、プレイヤー体験を広げることを重視していました。
漆黒ではそれとまったく同じような要素はなかったかもしれませんが、とても新しい雰囲気のエリアを追加することができました。
過去の拡張のように単純に新フィールドを増やすだけではなくて、第一世界というまったく新しい世界を描くことができました。
- クリスタルタワーのレイドをやっていない人にとっては、水晶公が出てくる意味がよくわからないかもしれません。新生のサブストーリーと結びつけるという選択は難しいものでしたか?
石川:
クリスタルタワーシリーズを経験していないプレイヤーについての懸念はもちろんありましたが、今回のシナリオに水晶公を登場させたのは、漆黒にそのストーリー要素を入れるためでした。
クリスタルタワーシリーズをやっていなくても、水晶公と一緒に旅をするうちに彼を好きになれるようにしました。
もちろん彼が誰であるかということも大事でしたが、クリタワをやることが必須というようにはしたくなかったので、漆黒のストーリーを通してしっかりとキャラクターを描き、プレイしていない人でもちゃんと愛着がわくようにしました。
- ストーリーのどの部分を書くのが一番楽しかったですか?
石川:
戦いの前と後の会話を書くのが好きです。
そのバトルや雰囲気に合うような曲を聴きながら、セリフや言葉を考えていくのが楽しいです。
キャラクターたちがどんなことを話しながらこの戦いに向かうかな、とかですね。
- 漆黒では闇ではなく光が破壊をもたらしています。この世界や生息しているものをデザインするにあたり、どんなインスピレーションがありましたか?
石川:
光そのものが完全に悪だとか破壊の原因ではないということはしっかりと表現したかったです。
光によって問題は起きていましたが、「光が100%良いというわけではないのかもしれない」とプレイヤーに思ってほしくて、それがベースにありました。
「光の氾濫」で闇を取り戻す前はずっと明るいので、ビジュアルチームは、明るい天気だけど美しいだけじゃなくてちょっとニュアンスのある感じを表現しようとしていました。
鈴木:
光の氾濫に関しては、コンセプトアートがいくつかありましたが、最終的には3Dチームと協力してそのようなビジュアル表現を作りました。
最初は、まぶしい光で全部ウォッシュアウトされた状態を試してみたんですが、ゲームプレイとしては少し問題があるとわかって、少し色があるけど一部の要素は白くするとか、いろいろなアイデアを試してみました。環境のメンバーと一緒に光をどのように表現するか細かい調整をして、P/Dの吉田さんとも相談して最終的な環境のカラーリングを決めました。
もう1つ心配だったのが、明るいエリアばかりとなるとプレイヤーに全て似たような印象に感じられてしまうのではないかということでした。そのため各エリアで色のバリエーションがあるようにして、エリアによって強調されている色を変えて、それぞれ異なる特徴があるように作りました。
- 新しいけれどもどこか面影があるという世界を作るにあたって、印象に残っているエリアなどはありますか?
鈴木:
環境や背景の面では、ピクシー族のイル・メグが印象深いです。プレイヤーが足を踏み入れた時に原初世界と大きく異なる雰囲気を感じられるよう、アートチームはかなり気を配って作りました。テンペストもかなりビジュアル表現にこだわって作っています。
- 第一世界の製作にあたって直面した課題はありますか?
石川:
文字が違うというのが大変でした。
鈴木:
原初世界ではエオルゼア文字がありますが、第一世界でノルヴラントに行くと言語が違います。
文字が違うし、ピクシー族も独自の言語があったので、違う世界に来て、原初世界とは言葉も全然違うということを表現するのに苦労しました。
石川:
もちろんセリフ自体はプレイヤーの使っている言語と同じなので、一見違いを感じないかもしれませんが、周囲を見てみると、例えば箱にラベルがあったらそこにエオルゼア文字は使えません。
建物の看板などもノルヴラント専用の文字になっているので、そういったところに苦労しました。
※海外プレイヤーによるノルヴラント文字まとめ 上段が小文字、下段が大文字
- 漆黒は全体的にとても良い評価が得られていますが、振り返ってみて、チャンスがあれば変更したいところやもう少し加えたかったことなどはありますか?
鈴木:
フェオ=ウルにオリジナルのモデルを作ってあげたかったですね。
キャラクターのモデルを作るのには順番があって、ピクシーで既に流用できるモデルがあったのでフェオ=ウルにはそれを使いました。
彼女の特徴や表現の仕方を引き出すのが難しくて、動いたときに彼女のツインテールがどのように流れるかなど、できることに制限がありました。
なのでもしやり直せる機会があるなら、フェオ=ウルの骨組みやモデリングを専用のものにしたいですね。
ただ、もちろんキャラクターモデリングチームのスタッフはフェオ=ウルに個性を与えるためにすごく努力してくれたので、結果に不満というわけではないです。
- 紅蓮のフィードバックを受けて、漆黒で改善したことはありますか?
石川:
紅蓮がリリースされたのは漆黒の計画が始まってから1か月後くらいだったので、シナリオの概要にはフィードバックを反映するというのは難しかったです。
ただ、紅蓮でメインクエスト序盤にインスタンスバトルがあると混雑してしまうということがわかったので、漆黒では同じ問題が起きないよう注意しました。
- 最後に、ファンに何か伝えたいことはありますか?
鈴木:
まず何より、予想を遥かに超える大きな反響をいただけたことを本当に嬉しく感じています。
たくさんの人にゲームを楽しんでいただけて、その話を聞いてまた新しい人が遊んでくれています。
プレイヤーの輪が広がって行っているので、引き続きたくさんの人に楽しんでいただけるようみんなで努力していきます。
石川:
漆黒では過去のシナリオでの謎が明かされたり、伏線を回収したりするような内容が多かったと思います。
でも漆黒を作ることができたのはみなさんが長い間このゲームを遊んでくれたおかげで、ここまでストーリーを発展させることができました。
FF14と漆黒のヴィランズは、私たちの光の戦士、今は闇の戦士であるプレイヤーのみなさんがいなければできなかったことで、これからも一緒に続けてくれると嬉しいです。
メインシナリオライター石川夏子さんとリードアーティスト鈴木健夫さんが、漆黒のストーリーやアートの開発についてお話をされています。
主な内容を翻訳しました。
Hardcore Gamer - PAX West 2019: FFXIV Scenario Writer, Art Lead Discuss Work on Shadowbringers
- 過去の拡張と比較して、漆黒の製作はいかがでしたか?
石川:
漆黒は3つ目の拡張で、過去の2つに比べて重要でないとか大きくないとはプレイヤーに感じさせたくなかったので、全力を尽くしました。
そのため漆黒に盛り込みたかったことがたくさんありました。
拡張でやりたいことのボリュームだけでもとにかく膨大で大変な作業でしたが、みんなすごくがんばりました。
鈴木:
アート面では、プレイヤー種族の追加が大きかったです。
紅蓮では新種族の追加がありませんでしたが、漆黒では2つの新しい種族を追加することができました。
ゲーム内の環境や背景については、過去の拡張ではマウントで空が飛べるようになったり、水中に潜ることができるようになったり、プレイヤー体験を広げることを重視していました。
漆黒ではそれとまったく同じような要素はなかったかもしれませんが、とても新しい雰囲気のエリアを追加することができました。
過去の拡張のように単純に新フィールドを増やすだけではなくて、第一世界というまったく新しい世界を描くことができました。
- クリスタルタワーのレイドをやっていない人にとっては、水晶公が出てくる意味がよくわからないかもしれません。新生のサブストーリーと結びつけるという選択は難しいものでしたか?
石川:
クリスタルタワーシリーズを経験していないプレイヤーについての懸念はもちろんありましたが、今回のシナリオに水晶公を登場させたのは、漆黒にそのストーリー要素を入れるためでした。
クリスタルタワーシリーズをやっていなくても、水晶公と一緒に旅をするうちに彼を好きになれるようにしました。
もちろん彼が誰であるかということも大事でしたが、クリタワをやることが必須というようにはしたくなかったので、漆黒のストーリーを通してしっかりとキャラクターを描き、プレイしていない人でもちゃんと愛着がわくようにしました。
- ストーリーのどの部分を書くのが一番楽しかったですか?
石川:
戦いの前と後の会話を書くのが好きです。
そのバトルや雰囲気に合うような曲を聴きながら、セリフや言葉を考えていくのが楽しいです。
キャラクターたちがどんなことを話しながらこの戦いに向かうかな、とかですね。
- 漆黒では闇ではなく光が破壊をもたらしています。この世界や生息しているものをデザインするにあたり、どんなインスピレーションがありましたか?
石川:
光そのものが完全に悪だとか破壊の原因ではないということはしっかりと表現したかったです。
光によって問題は起きていましたが、「光が100%良いというわけではないのかもしれない」とプレイヤーに思ってほしくて、それがベースにありました。
「光の氾濫」で闇を取り戻す前はずっと明るいので、ビジュアルチームは、明るい天気だけど美しいだけじゃなくてちょっとニュアンスのある感じを表現しようとしていました。
鈴木:
光の氾濫に関しては、コンセプトアートがいくつかありましたが、最終的には3Dチームと協力してそのようなビジュアル表現を作りました。
最初は、まぶしい光で全部ウォッシュアウトされた状態を試してみたんですが、ゲームプレイとしては少し問題があるとわかって、少し色があるけど一部の要素は白くするとか、いろいろなアイデアを試してみました。環境のメンバーと一緒に光をどのように表現するか細かい調整をして、P/Dの吉田さんとも相談して最終的な環境のカラーリングを決めました。
もう1つ心配だったのが、明るいエリアばかりとなるとプレイヤーに全て似たような印象に感じられてしまうのではないかということでした。そのため各エリアで色のバリエーションがあるようにして、エリアによって強調されている色を変えて、それぞれ異なる特徴があるように作りました。
- 新しいけれどもどこか面影があるという世界を作るにあたって、印象に残っているエリアなどはありますか?
鈴木:
環境や背景の面では、ピクシー族のイル・メグが印象深いです。プレイヤーが足を踏み入れた時に原初世界と大きく異なる雰囲気を感じられるよう、アートチームはかなり気を配って作りました。テンペストもかなりビジュアル表現にこだわって作っています。
- 第一世界の製作にあたって直面した課題はありますか?
石川:
文字が違うというのが大変でした。
鈴木:
原初世界ではエオルゼア文字がありますが、第一世界でノルヴラントに行くと言語が違います。
文字が違うし、ピクシー族も独自の言語があったので、違う世界に来て、原初世界とは言葉も全然違うということを表現するのに苦労しました。
石川:
もちろんセリフ自体はプレイヤーの使っている言語と同じなので、一見違いを感じないかもしれませんが、周囲を見てみると、例えば箱にラベルがあったらそこにエオルゼア文字は使えません。
建物の看板などもノルヴラント専用の文字になっているので、そういったところに苦労しました。
※海外プレイヤーによるノルヴラント文字まとめ 上段が小文字、下段が大文字
- 漆黒は全体的にとても良い評価が得られていますが、振り返ってみて、チャンスがあれば変更したいところやもう少し加えたかったことなどはありますか?
鈴木:
フェオ=ウルにオリジナルのモデルを作ってあげたかったですね。
キャラクターのモデルを作るのには順番があって、ピクシーで既に流用できるモデルがあったのでフェオ=ウルにはそれを使いました。
彼女の特徴や表現の仕方を引き出すのが難しくて、動いたときに彼女のツインテールがどのように流れるかなど、できることに制限がありました。
なのでもしやり直せる機会があるなら、フェオ=ウルの骨組みやモデリングを専用のものにしたいですね。
ただ、もちろんキャラクターモデリングチームのスタッフはフェオ=ウルに個性を与えるためにすごく努力してくれたので、結果に不満というわけではないです。
- 紅蓮のフィードバックを受けて、漆黒で改善したことはありますか?
石川:
紅蓮がリリースされたのは漆黒の計画が始まってから1か月後くらいだったので、シナリオの概要にはフィードバックを反映するというのは難しかったです。
ただ、紅蓮でメインクエスト序盤にインスタンスバトルがあると混雑してしまうということがわかったので、漆黒では同じ問題が起きないよう注意しました。
- 最後に、ファンに何か伝えたいことはありますか?
鈴木:
まず何より、予想を遥かに超える大きな反響をいただけたことを本当に嬉しく感じています。
たくさんの人にゲームを楽しんでいただけて、その話を聞いてまた新しい人が遊んでくれています。
プレイヤーの輪が広がって行っているので、引き続きたくさんの人に楽しんでいただけるようみんなで努力していきます。
石川:
漆黒では過去のシナリオでの謎が明かされたり、伏線を回収したりするような内容が多かったと思います。
でも漆黒を作ることができたのはみなさんが長い間このゲームを遊んでくれたおかげで、ここまでストーリーを発展させることができました。
FF14と漆黒のヴィランズは、私たちの光の戦士、今は闇の戦士であるプレイヤーのみなさんがいなければできなかったことで、これからも一緒に続けてくれると嬉しいです。