アーリーアクセス開始から1週間後、2019/7/4~2019/7/7にパリで開催されたJapan Expo 2019にて海外メディアJeuxOnlineとFinalandによる吉田Pの合同インタビューが行われました。

一部ネタバレを含みますのでメインストーリーが終わっていない方はご注意ください。

元記事:
JeuxOnline - FFXIV Shadowbringers : Interview avec Naoki Yoshida post-sortie de l'extension
Finaland - JE2019 : Interview Naoki Yoshida (ENG)



『漆黒のヴィランズ』のシナリオの種は2016年のパッチ3.4で既に蒔かれていましたが、3年近く経ってからようやくこのストーリーが進みました。なぜこれほど長くかかったのでしょうか?

FF14の開発にはメインストーリーだけでなく様々なコンテンツがあります。計画は2年後まで立てられているので、拡張がリリースされた時には開発チームはメジャーアップデートと次の拡張に向けての開発を同時に進めています。

第一世界に行く前に、原初世界で解決しないといけない問題がたくさんありました。アラミゴの解放や、ドマと東方を救わなければいけませんでした。帝国との戦いも切迫していて重要で、これを放っておいたまま原初世界に行くわけにはいきません。

原初世界の問題は1.0頃からあったので、これを解決してから行くのが筋だと思いました。
みなさんからすると3年もかかったというように感じられるかもしれませんが、僕たちは順番にやっていっただけで、長すぎたとは思っていません。


漆黒のストーリーはこれまでで一番暗く、FFシリーズ全体で見てもかなり暗い内容ですが、世界は光であふれています。このようなパラドックスは個人的に描きたかったものでしょうか?この世界は何かおかしいと?

漆黒だけではなくて、FF14全体のテーマとしてあるものです。
例えば蒼天ではトールダンは全てのドラゴン族を殲滅して人に平和をもたらしたいと考えていて、それに伴う犠牲については一切顧みようとしませんでした。彼らの目的と目標は正義でしたが、それは敵も同じでした。
なのでそういうパラドックスは今回に限ったことではなく、FF14の全ての拡張での共通テーマです。

漆黒の制作については、プレイヤーは第一世界に初めて行くことになるので、「この世界を救いたい!」と思ってもらえるように作りました。
ストーリーの進行にギャップがあったり、プレイヤーのモチベーションが下がってきていることもあるかもしれないので、ゲームを続ける励みになるようなものを入れたかった。
そのために開発チームは特に「原初世界に闇を取り戻して世界を救う」というところに力を入れて作りました。これについてはシナリオチームともしっかりディスカッションして、この拡張をプレイする目標と励みになるようにしました。


以前のインタビューで、現実的な悪役NPCを作るのは難しいとおっしゃっていました。
その点、ランジート将軍やソル帝はすごくよくできているキャラクターだと思います。
過去のNPCと被らないような、カリスマ性のある新しい悪役をどうやって作っているのでしょうか?


それは難しい質問ですね。
悪役を作るときには、すごく憎まれるようにするか、もしくはある面では愛されるようなキャラクターにすることで印象に残るようにしています。
例えば、ゼノスは究極の悪のような感じで登場させていますが、エメトセルクは自分の世界が一番だと考えていてそれを取り戻そうとしているだけです。
なので完全な悪か、自分の信じる目的を果たそうとしているか、2つのどちらかに設定するようにしています。中間だと中途半端になってしまうので、それは開発チームは避けるようにしています。




バトルシステム面で、例えるなら紅蓮はステップでしたが漆黒は三段ジャンプでした。
一部のジョブは全然別物になっているように感じられて、プレイヤーのフィードバックが心配でした。
リスクを取るのは悪くないことだと思いますが、これだけの変更を一気に行うことに不安はありませんでしたか?


メディアツアーで話したように、2013年に新生FF14がリリースされてから6年になります。
ベースとなるシステムがあり、そこに新しいシステムや新しいコンテンツが追加されてきました。今回の拡張に至るまでに、特に最近ゲームを始めたプレイヤーにとってはあまりにも複雑になりすぎていると感じていました。
ずっとプレイしてくれているベテランのプレイヤーにとっては、ジョブをどう扱えばいいかなどをわかっていますが、新規のプレイヤーにとってはそうではない。そのため新規と既存のプレイヤーの間に大きな差ができてしまっていました。楽しいと感じられるまでに理解しなければいけないことが多すぎるので、新規プレイヤーでもすぐに楽しく遊べるように複雑さを取り除きたいと思いました。
そしてストレスがなくなるよう、一度まっさらな状態から作り上げたいと思い、ジョブに大きな変更を加えました。

おっしゃるように、こういう大きな変更はリスクも伴います。
特に経験豊富でずっとプレイしてきたベテランプレイヤーにとってはあまりにも大きな変更で、慣れるまでに時間がかかるので、反発があることはもちろん想定していました。
どんな変更にもリスクがあります。これはバトルシステムだけでなく、ゲーム全体についてもそうです。

なのでFF14では大きな変更を加えるときには、必ずプレイヤーにどんな変更か、どんな理由なのかを伝えるようにしています。
そしてコミュニティのフィードバックによっていつでも調整をすることができます。これは悪かった、となったら変更して改善すればいい。
でもまずはどうしてその変更をしたのかプレイヤーにわかってもらって、それでもやっぱり嫌だと感じるなら調整を検討します。どんなコンテンツでもこれが我々のポリシーです。


新種族を追加するにあたってかなりのリソースを使ったと思います。このために作れなかったようなコンテンツもあると思います。各パッチや拡張で、どうやって優先度を決めているのでしょうか?

新しい拡張をデザインするときには、全体のデザインと方向性を見ています。何を目標とするのか、何をしたいのか。一番大事な要素はいつも「プレイヤーに楽しんでもらえるか」です。
これを基準に全部のアイデアの優先度を決めて、できるかどうかとどのくらいのリソースが必要なかのフィードバックを開発チームに聞いています。その後にスケジュールを出して、実現可能か判断していきます。
なので、特別な決め方をしているわけではありません。これまでと同じです。

大型パッチでも同じで、どんなものを入れた方がいいか決めて、開発チームにフィードバックを聞いています。そこで例えば「これはできるけど、これはリソースが足りないからできない」とか言われます。それをもとにパズルをやり直して、スケジュールに全ての要素を組み込みます。
コンテンツを決めるにあたって大事なのは、FF14の全てのタイプのプレイヤーが楽しめるようにすることです。難しい挑戦を求めるハードコアプレイヤーもいれば、通常のコンテンツで遊んでギャザクラもやるミッドコアもいて、もっとカジュアルなプレイヤーもいます。一部の層だけが喜ぶようなデザインではだめで、パッチごとに全ての層のプレイヤーが満足できるようにしないといけません。
そうやって各アップデートでどのようなコンテンツを実装するかをパズルのように決めていきます。


吉田さんが監修している漫画『FF:ロストストレンジャー』のとあるページで、ヴィエラとロンゾが出てきます。これは漆黒の発表のずっと前のことです。これはヒントだったのでしょうか?漫画の中で他にもヒントが出てくることはありますか?

これはまったくの偶然です。
漫画はFFの世界での新しいストーリーですが、作者がFFシリーズのファンなので過去のFF作品の要素も登場させています。もちろん僕が監修しているのでヴィエラとロンゾが出てきたことには気付きましたが、作者がFF14プレイヤーでもあるので「次の拡張で追加するから入れないで!」とは言えませんでした。


漆黒のメインシナリオは素晴らしかったです。世界設定のことがたくさん明かされ、ストーリーの大きなターニングポイントになっていると思います。でも、次の拡張でもっと面白いストーリーをとなると難しくないでしょうか?このレベルの内容を維持することにプレッシャーを感じますか?

FF14の開発で拡張でも大型アップデートでも、プレッシャーの量が変わるという時は特にないと思います。新しいものを作るときにはいつもチャレンジがあり、漆黒が大成功したからといって何も変わりません。常に最高のストーリーと最高のゲーム体験をプレイヤーに提供しようとしているので、ストレスレベルはずっと同じです。

実は蒼天をリリースしてからパッチ3.3までも同じで、「FF14で蒼天がこれまでで一番よかった」とプレイヤーから言われていました。そして今は漆黒が一番いいと言われています。
ハードルがあるのはいいことで、どちらにせよそれは越えていかなければいけないので、常に挑戦ではありますがやるしかありません。

もしかしたらまたメテオを呼んで世界を終わらせるかもしれないし。どうなるかわかりませんよ?


『罪喰い』と戦っていて最初に頭に浮かんだのがベヨネッタでした。アンブラの魔女が光のルーメンと戦っていました。あのゲームは聖書やエノク魔術をモチーフにしています。漆黒でもそのようなインスピレーションがあったのでしょうか?

僕も開発チームも『ベヨネッタ』は好きですけど、特に漆黒のメインシナリオに影響があったわけではありません。

我々の作るシナリオと神谷さんの作るシナリオが似ているのは、中二病っぽいインスピレーションから来ているからですかね。
フランス語/英語で『中二病』解説:中学2年生症候群。思春期に多く、過剰な自己愛の妄想を持っている人を表現する言葉。アニメでは典型的な性格の一つとしてよく描かれ、岡部倫太郎や小鳥遊六花などが該当する。ちなみに吉田さんは暗黒騎士を蒼天で初めて紹介したときに「中二病っぽい」と表現した。)

アトラスの『女神転生』シリーズも似たような聖書からのインスピレーションを受けていますね。そういうアイデアは好きなので、こういったゲームは漆黒と似たようなところがあると思います。

漆黒についてですが、聖書だけでなくギリシャ神話や他の古い神話からもアイデアを使っています。興味があれは、ネットでキャラの名前や『アーモロート』とかのエリア名を検索してみてください。開発チームがどんなところから影響を受けているかのヒントになると思います。