2018/4/8にPAX EAST 2018にて行われた
紅蓮のリベレーター ストーリーパネルの後半部分、
ジョン・クロウさんによる英語の解説内容をまとめました。
動画
The Writing of FINAL FANTASY XIV:Stomblood 後半は00:26:30頃から
______________________
スクエニに入ったきっかけ:
付き合っていた彼女が当時の英語ローカライズリードKenの知り合いだった。
「こんな仕事があるよ」と言われて面白そうだったので応募したら、その後振られた。
2012年8月に入社し、3.0後に英語チームのリーダーになった。
これまでの主な仕事一覧。
つらかったのはリテイナーの全台詞を担当したこと。
全64パターン作って、その後アウラが追加されてまた作ることになった。
デスクの様子。コージが書いた次のリターン・トゥ・イヴァリースの台詞をチェック中。
周辺。開発チームはすぐ横にいる。
コージと織田さんは振り返ればすぐ話し合える位置にいる。
コージはビールが好き。左のイラストはファンからもらったもの。
織田さんと石川さんの席も隣同士。
ここではボイス関連の5~7番について主に解説。
ボイスの収録は重要な段階で、かなり早いうちから行う必要がある。
ボイスで何か失敗があった場合、後から撮り直すことは難しく、収録済のものでなんとかしないとスケジュール的に厳しい。
まずFF14のローカライズの基本的なアプローチを紹介。
他言語のボイスを流している人は気付くかもしれないが、
セリフの内容は必ずしも言語ごとでぴったりマッチしているわけではない。
例えば1つの言語ではNPCの名前を言っていても、別の言語ではそれがなかったりする。
なぜこのようにしているかというと、ローカライズでは「日本語のゲームを別言語に翻訳」したものではなく「もともとその言語で開発されたゲーム」のようにすることを重要視しているため。
単語や文法にフォーカスするのではなく、全体の意味や目的が伝わることの方が大事。
FF14は日本語から翻訳された和ゲーとの競争を目的としているのではなく、洋ゲーとも競争したい。
例として、リセとアリゼーのやり取りのシーン:
これが最終版のテキスト。boyとbuoyantでダジャレが入っている。
個人的にはダジャレは好きじゃないが、こうなるまでの過程を紹介。
まず、日本語を直訳した場合だとこうなる。
日本語だとこのセリフはこういう演出でまったく問題ないが、
英語に直訳するとswimという言葉が多すぎるように聞こえてしまう。
こちらが直訳をちょっと調整した状態。
日本語でのキーポイントは、同じことを2回言っている点で、
石川さんのメモにも「大事なことなので2回言います」と書いてある。
直訳だとこの繰り返しによる強調がわかりづらいので、英語でも同じセリフを2回並べてみた。
ジョークは伝わるが、それでもやはり何か足りないように感じてしまう。
こちらが自分が編集担当に送ったバージョン。
「私は水泳が得意よ、犬かきの兄と違って。」という内容に変えてみた。
この後ろに「The boy isn't very bouyant」とダジャレを加えたのは編集担当。
ボイス収録時に考慮しなければならないもう1つ重要なポイントは、どのタイミングで、どのような意図で台詞が入るのかということ。
元の日本語のテキストで曖昧な点があってはならない。
収録したボイスを使うのは何ヶ月も後なので、リテイクができない。
ここはボイスではないが、石川さんのコメントにミコッテ族が誰のことを指しているのか記載されていた。
メモがない場合もあるが、席が近いので何か不明なことがあれば必ず確認しながら作業している。
例えばユウギリの両親との会話で、ユウギリの兄弟について話す場面があり、性別や人数など細かく確認した。
世界設定班はプレイヤーにはキャラ設定を隠すことはあるが、ローカライズチームに隠していることはない。はず。
このようにボイス用のセリフ翻訳は非常に大変な作業で、2016年の11月頃に1ヶ月~1ヶ月半かけて行った。
同時に音声収録用の準備も進めていった。
ボイス収録用の資料の例。
もちろんみんな拡大して読むんだろうけど、ここに書いてある内容は確定ではない。
特にキャラの年齢は「大体このくらいの年齢をイメージして演技してほしい」という参考年齢で、公式設定ではない。
右側はオーディション用のセリフ。大体は実際に使う内容から引っ張ってきているが、オーディション時に表現の幅を確認するためにゲーム内で存在しないセリフも作って入れることがある。
仮ボイスの収録現場。
仮ボイスは、ムービーのナレーションや、アクションに合わせた場面でのセリフの長さを調整するためのもの。
全ての言語でセリフの所要時間が同じである必要がある。
全てのチームの代表を集めて、オフィス内のスタジオで仮ボイスを収録。
これは自分がやっている所。
みんなが聞いて、所要時間を記録し、あと数秒長くしてほしいとか短くしてほしいとか意見を言う。
傾向としては、日本語のナレーションは速度が遅め、英語は速めになりがち。
ナレーションの例。
最終版:
自分がやった仮ボイス:
大体どのくらいのペースになるかを考えながら読んでいる。
アクション/バトルシーンの例。
これは最終的にはギョドウが蹴り飛ばされるシーンになった。
セリフ収録時にはどのようなアクションにするか決まっておらず、ギョドウのモデリングも終わっていなかったが、うめき声が入ることはわかっていた。
自分が演じた仮ボイスのお気に入りはこれ。
3.1で女の子が司祭に突き落とされるシーン。
実は英語版では女の子とヴィゾーヴニルの声優は同じ人なので、自分で自分を助けている。
予定通り進んだら、次に最終的なボイス収録を進めていく。
日本語版は声優も日本にいるので期間に少し余裕があるが、
他の言語はスタッフが現地で立ち会うため1~3週間の短期間で集中的に行う。
少しでも迷う点があれば必ず複数パターン撮っておく。
後からリテイクすることはできないため。
各シーンでは必ずこのようにストーリーボードがある。
誰が、どこに、どのくらいの距離でいるか等。
大事な話の時には大体こんな感じで円形になって、この後みんなが同時に頷くのが予想できる。
アップになる場合など、セリフによっては詳細情報もある。
日本人は手を見るシーンを作るのが好きみたい。
手を見るシーン例。
仮面の男(ウリエンジェ)が葛藤するシーンでは複数パターン収録した。
もっと感情的なバージョンもあったが、最終的なカットシーンのアニメーションに合わせて少し落ち着いた方を選んだ。
ボイスのない部分のテキスト作成はこの後に行っていく。
とにかく書く。
時間がないので、今回はここまでです。
紅蓮のリベレーター ストーリーパネルの後半部分、
ジョン・クロウさんによる英語の解説内容をまとめました。
動画
The Writing of FINAL FANTASY XIV:Stomblood 後半は00:26:30頃から
______________________
スクエニに入ったきっかけ:
付き合っていた彼女が当時の英語ローカライズリードKenの知り合いだった。
「こんな仕事があるよ」と言われて面白そうだったので応募したら、その後振られた。
2012年8月に入社し、3.0後に英語チームのリーダーになった。
これまでの主な仕事一覧。
つらかったのはリテイナーの全台詞を担当したこと。
全64パターン作って、その後アウラが追加されてまた作ることになった。
デスクの様子。コージが書いた次のリターン・トゥ・イヴァリースの台詞をチェック中。
周辺。開発チームはすぐ横にいる。
コージと織田さんは振り返ればすぐ話し合える位置にいる。
コージはビールが好き。左のイラストはファンからもらったもの。
織田さんと石川さんの席も隣同士。
ここではボイス関連の5~7番について主に解説。
ボイスの収録は重要な段階で、かなり早いうちから行う必要がある。
ボイスで何か失敗があった場合、後から撮り直すことは難しく、収録済のものでなんとかしないとスケジュール的に厳しい。
まずFF14のローカライズの基本的なアプローチを紹介。
他言語のボイスを流している人は気付くかもしれないが、
セリフの内容は必ずしも言語ごとでぴったりマッチしているわけではない。
例えば1つの言語ではNPCの名前を言っていても、別の言語ではそれがなかったりする。
なぜこのようにしているかというと、ローカライズでは「日本語のゲームを別言語に翻訳」したものではなく「もともとその言語で開発されたゲーム」のようにすることを重要視しているため。
単語や文法にフォーカスするのではなく、全体の意味や目的が伝わることの方が大事。
FF14は日本語から翻訳された和ゲーとの競争を目的としているのではなく、洋ゲーとも競争したい。
例として、リセとアリゼーのやり取りのシーン:
これが最終版のテキスト。boyとbuoyantでダジャレが入っている。
個人的にはダジャレは好きじゃないが、こうなるまでの過程を紹介。
まず、日本語を直訳した場合だとこうなる。
日本語だとこのセリフはこういう演出でまったく問題ないが、
英語に直訳するとswimという言葉が多すぎるように聞こえてしまう。
こちらが直訳をちょっと調整した状態。
日本語でのキーポイントは、同じことを2回言っている点で、
石川さんのメモにも「大事なことなので2回言います」と書いてある。
直訳だとこの繰り返しによる強調がわかりづらいので、英語でも同じセリフを2回並べてみた。
ジョークは伝わるが、それでもやはり何か足りないように感じてしまう。
こちらが自分が編集担当に送ったバージョン。
「私は水泳が得意よ、犬かきの兄と違って。」という内容に変えてみた。
この後ろに「The boy isn't very bouyant」とダジャレを加えたのは編集担当。
ボイス収録時に考慮しなければならないもう1つ重要なポイントは、どのタイミングで、どのような意図で台詞が入るのかということ。
元の日本語のテキストで曖昧な点があってはならない。
収録したボイスを使うのは何ヶ月も後なので、リテイクができない。
ここはボイスではないが、石川さんのコメントにミコッテ族が誰のことを指しているのか記載されていた。
メモがない場合もあるが、席が近いので何か不明なことがあれば必ず確認しながら作業している。
例えばユウギリの両親との会話で、ユウギリの兄弟について話す場面があり、性別や人数など細かく確認した。
世界設定班はプレイヤーにはキャラ設定を隠すことはあるが、ローカライズチームに隠していることはない。はず。
このようにボイス用のセリフ翻訳は非常に大変な作業で、2016年の11月頃に1ヶ月~1ヶ月半かけて行った。
同時に音声収録用の準備も進めていった。
ボイス収録用の資料の例。
もちろんみんな拡大して読むんだろうけど、ここに書いてある内容は確定ではない。
特にキャラの年齢は「大体このくらいの年齢をイメージして演技してほしい」という参考年齢で、公式設定ではない。
右側はオーディション用のセリフ。大体は実際に使う内容から引っ張ってきているが、オーディション時に表現の幅を確認するためにゲーム内で存在しないセリフも作って入れることがある。
仮ボイスの収録現場。
仮ボイスは、ムービーのナレーションや、アクションに合わせた場面でのセリフの長さを調整するためのもの。
全ての言語でセリフの所要時間が同じである必要がある。
全てのチームの代表を集めて、オフィス内のスタジオで仮ボイスを収録。
これは自分がやっている所。
みんなが聞いて、所要時間を記録し、あと数秒長くしてほしいとか短くしてほしいとか意見を言う。
傾向としては、日本語のナレーションは速度が遅め、英語は速めになりがち。
ナレーションの例。
最終版:
自分がやった仮ボイス:
大体どのくらいのペースになるかを考えながら読んでいる。
アクション/バトルシーンの例。
これは最終的にはギョドウが蹴り飛ばされるシーンになった。
セリフ収録時にはどのようなアクションにするか決まっておらず、ギョドウのモデリングも終わっていなかったが、うめき声が入ることはわかっていた。
自分が演じた仮ボイスのお気に入りはこれ。
3.1で女の子が司祭に突き落とされるシーン。
実は英語版では女の子とヴィゾーヴニルの声優は同じ人なので、自分で自分を助けている。
予定通り進んだら、次に最終的なボイス収録を進めていく。
日本語版は声優も日本にいるので期間に少し余裕があるが、
他の言語はスタッフが現地で立ち会うため1~3週間の短期間で集中的に行う。
少しでも迷う点があれば必ず複数パターン撮っておく。
後からリテイクすることはできないため。
各シーンでは必ずこのようにストーリーボードがある。
誰が、どこに、どのくらいの距離でいるか等。
大事な話の時には大体こんな感じで円形になって、この後みんなが同時に頷くのが予想できる。
アップになる場合など、セリフによっては詳細情報もある。
日本人は手を見るシーンを作るのが好きみたい。
手を見るシーン例。
仮面の男(ウリエンジェ)が葛藤するシーンでは複数パターン収録した。
もっと感情的なバージョンもあったが、最終的なカットシーンのアニメーションに合わせて少し落ち着いた方を選んだ。
ボイスのない部分のテキスト作成はこの後に行っていく。
とにかく書く。
時間がないので、今回はここまでです。