要望を頂いたので、元のインタビュー記事の内容を全て翻訳しました。

GamesIndustry.bizというゲーム製作・販売者向けの情報サイトでのインタビューで、
無料ゲームが多い中でなぜ月額課金制のFF14は成功しているのか、という話です。

元記事: Final Fantasy XIV: Closing in on peak WoW

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ファイナルファンタジーXIV: WoWのピークプレイヤー数に迫る

プレイヤー数1000万人を突破し、さらに増加中。寛容なフリートライアルとテレビドラマ構造による本作の成功について吉田直樹P/Dが語る


FF15はここ1年で多くの注目を集めましたが、14作目がこの長いFFシリーズにおいて最も成功するタイトルとなるかもしれません。

旧FF14は失敗作として刻まれてしまったかもしれませんが、新拡張パッケージ『紅蓮のリベレーター』リリースの影響もあり、スクウェア・エニックス社は8月にFF14の累計プレイヤー数が1000万人を突破したことを発表しました。

これはWoWのピーク時アクティブプレイヤー数1200万人まであと200万人に迫っており、基本無料化していないMMOでは一番近い数字です。FF14開発チームの栄光は近いですが、吉田Pはこの野望に対しては慎重です。

「まだ高く遠い目標です。我々はBlizzard社を尊敬していて、追いつきたいとは考えていますが、一歩ずつ進んでいきたいと思っています。まだそこまでは達していないと思います。」

WoW含め他のほとんどの月額制MMOのように、FFにはフリートライアルがあります。1000万人というプレイヤー数にはこれらの無料プレイヤー数も含まれています。課金プレイヤーと無料プレイヤーの割合は発表できないようですが、「課金アクティブプレイヤー数は過去最高を記録している」とのことです。

この時代にプレイヤーに月額課金者数を増やすことは至難の業です。
様々な基本無料プレイのゲームがある中で、冒険を続けるためにMMOプレイヤーに月額課金をしてもらうのは難しいことで、吉田Pもこれを充分に理解しています。

「次の1ヶ月間でどんな予定が入るかはわかりません。みんな忙しいので、次の30日間でどれだけゲームができるかわかりません。そのような中で事前に30日分課金してもらえるようお願いをしているわけなので、それは1つの障害ではあります。ハードルは高いです。」

ゲーム業界の多くの人はMMORPGを瀕死のジャンルとして捉えていますが、スクエニはどうやってこれだけ多くのユーザーに課金してもらえるよう納得してもらっているのでしょうか?吉田Pの視点では、FF14の課金者は品質に対して課金をしてくれていると感じています。安定したサーバー、定期的なアップデート、各パッチのコンテンツ量などです。

「課金という結果は後からついてくるもののように思います。このような要素を提供することは当たり前だと思われるかもしれませんが、これを継続的に行うことで、ユーザーに課金して頂けていると感じています。」


また、プレイヤーに課金してもらうために、FF14は賢い戦略を取っています。多くの月額制MMOでは低いレベルの間しか無料で遊べません。例えばWoWでは無料プレイのレベルキャップは20です。ゲーム毎にレベルアップの速度は異なりますが、FF14はレベル35までという比較的高めのレベルまで無料で遊べます。無料での上限までにどんな経験ができるかでユーザーの課金に繋がります。

レベル20では、大きなボス戦闘に勝利することで『光の戦士』と呼ばれ、この世界でNPCからそう認識されるようになります。レベル30では『クラス』システムからFFシリーズの主要要素である『ジョブ』に変わることになりますが、この新しい道が開けてからはあと5レベルしか無料では遊べません。

「フリートライアルはちょうどこれから大きな冒険が始まろうとしているいいところで終了するので、プレイヤーはその後が見たくなります。そのようにデザインされています。」

「次の拡張をリリースする時には、レベル50までフリートライアルを延長するかもしれません。ゲームがどんな感じなのかちゃんと体験してほしいです。そうすれば確実に続けたいと思ってもらえると思います。」


これらの戦略は確実に上手く行っています。月額課金システムで納得してもらえている(少なくともプレイヤーの頭の中では)MMOは現在は非常に少ないですが、ゲームの品質と、FFシリーズのブランド力により、月額課金が吉田Pおよびスクエニからしても最も適したビジネスモデルとなっています。

「ただ、もし80~90%のプレイヤーが基本無料化を望むことがあれば、ビジネスモデルの変更を検討しなければいけないかもしれません。でもその場合はそれに合わせてゲームデザインも変更する必要があります。プレイヤーのニーズに沿ったゲームデザインにすることが大事なので、ビジネスモデルをどうするかはそれ次第です。」




ファイナルファンタジーというブランドはFF14の成功に関与している要素の一つです。今年で30周年を迎えたFFシリーズは、Warcraftシリーズを含めたほとんどのMMOよりも古いブランドです。しかし、吉田Pは「FF15の成功による14への直接的な影響はなかった」と感じています。

それよりも、これまでのFFシリーズによる成功の積み重ねと期待により、FFブランドにふさわしいMMOとして開発が推し進められてきました。実際に、ゲームの質とストーリーがFF14の魅力の鍵となっています。

特にストーリーに関してはFF14は非常に力を入れています。MMOというジャンルでは、そこまでメインストーリーに重点が置かれず、乱雑なお使いクエストや戦闘の繰り返しなどでストーリーが埋もれてしまっている場合が多くあります。

「14では他のMMOとは違うことをしています。メインストーリークエストさえこなせばゲームを進められます。IDやボス戦は全てメインストーリーの一部として組み込まれているので、単体のRPGとして遊ぶことができます。パーティーのメンバーがNPCではなく他のプレイヤーであるというだけです。」

「フィールドのモンスターを狩っても、メインストーリーを進めるより得られる経験値は少ないです。」

「ほとんどの他のMMOでは、世界設定自体はしっかりしていますが、プレイヤー自身が物語の英雄ではないということが多いです。これはファイナルファンタジーなので、良いストーリーが必要です。これがこのゲームを作る上での基本となる要素で、これが他のMMORPGとの違いです。」

ストーリーの展開はプレイヤーをつなぎ留めるだけでなく、拡張パッケージの販売にも一役買っています。一部のMMOでは拡張パッケージは、包括的な追加要素として、既存の世界にほぼ独立したパッケージとして導入される場合がありますが、FF14の拡張パックはそれまでの全てに繋がっています。

「各拡張パッケージはテレビドラマの新シーズンなようなものとして考えています。新生エオルゼアの最初のリリースは、2.Xシリーズの1話でした。その後3.5ヶ月ごとに続きをリリースしていき、パッチ2.55が新生エオルゼアの最終話でした。」

「この最終話では、次のシーズン、次の拡張に向けて、続きが気になるような衝撃の展開がありました。そこから蒼天と3.Xシリーズの各パッチでストーリーが続いていき、そして紅蓮でシーズン3に入りました。今後も大きなパッチごとにストーリーが進み、次の拡張で新シーズンがスタートしていきます。」

このシステムは新規プレイヤーにとっては問題となる可能性があります。ドラマを途中から見始めようと思うと、過去のシリーズをまとめて見るのは大変ですが、3年分のMMOのクエストをやるとなるとさらに大変です。しかし、吉田Pと開発チームはこの点に対してもしっかりと対処しています。

「FF14ではしばらく休止しても大丈夫なように、上級プレイヤーにいつでも追いつけるようにしています。」

「新シーズンをリリースするたびに、過去の分の修正を行い、完全新規のプレイヤーでもできるだけ早く既存プレイヤーに追いつけるように調整を行っています。例えば、古いクエストで得られる経験値は昔の3倍になっていて、サブクエストをやらなくてもメインクエストだけでキャラクターが充分レベルアップできるようになっています。各レベルでの最適な装備もメインクエストで配布されるので、ゲームをスムーズに進めやすくなっています。」

「このような調整は新規プレイヤーが追い付きやすいように行っています。最新のシーズン3である紅蓮のリベレーターでも、シーズン1から新規に始めた人でも割と早いペースで追いつけます。」


今回の拡張では『新生/蒼天の冒険録』という新しいアイテムも実装され、過去のコンテンツを全てコンプリート扱いにし、紅蓮のストーリーから開始することもできるようになりました。以前から実装されている宿屋での『愛用の紀行録』で過去のカットシーンが見れるので、過去のストーリーも見ることはできます。

ストーリーポーションはまだFF14を始めていない人にとって便利なシステムですが、吉田Pが予想していたよりは必要とされていないようです。

「もしかしたら既存のプレイヤー達が、新生と蒼天のストーリーを飛ばしてしまうのはもったいないと新規の方々に言っているのかもしれません。これらのアイテムは思ったより使用されていません。新生と蒼天をちゃんとプレイしてから紅蓮に入ろうとしている人が多いようです。」


テレビドラマシリーズの製作指揮者のように、吉田Pもこのゲームのストーリーをどこまで続けられるかを考えなければいけません。特に、プレイヤーは課金をしないとストーリーを見続けられないので。どこまでの『シーズン』を計画しているのでしょうか?

「FF14は10年間運営したいと思っています。それが今自分の中ではっきりとイメージしているものです。4年目が過ぎたところなので、次は10年を目指しています。拡張パッケージをいくつリリースしたいかについてはまだ未定ですが、ゲームの成功が続いていけば、約2年ごとに拡張は出したいと思っています。今後の拡張に向けて少しずつ準備を進めています。」

最後に:「紅蓮のリリースでピークを迎えて頭打ちのような時期になるかと思っていましたが、予想以上に新規と復帰プレイヤーが増えていて驚いています。月額課金ユーザーも過去最高数を更新していて、まだピークには至っていません。そのピークを迎えるまでは、とにかく前に進むことに集中していきます。」