PAX West 2019にて海外メディアGamerEscapeにより行われた、メインシナリオライター石川夏子さんとリードアーティスト鈴木健夫さんのインタビュー記事から主な内容を翻訳しました。

GamerEscape: PAX West 2019 Interview with Final Fantasy XIV’s Natsuko Ishikawa and Takeo Suzuki


※メインストーリーのネタバレを含みます


- 主要NPCの衣装はこれまではもっとオリジナルなデザインのものが多かったですが、例えばサンクレッドは今回は普通のガンブレイカー防具でした。この理由はなぜでしょうか?

石川
現実的な観点から言うと、暁はストーリーの大事な要素ではあるものの、水晶公やエメトセルクのような新デザインのキャラも追加しているので、キャラデザインに使える開発リソースが限られていました。
それと、サンクレッド、ウリエンジェ、ヤ・シュトラはジョブを変更しているので、それを視覚的に表現したいということもあって、AF装備からインスピレーションを得てデザインが作られています。


第一世界で原初世界との類似点を見つけるのが楽しかったです。例えばラケティカ大森林やヤシュトラの仲間たちはどこかゲルモラっぽいなと感じました。これは意図的ですか?

石川
鋭いですね!漆黒のIDエリアを作っていた時、あの遺跡は開発内ではゲルモラダンジョンって呼ばれていたんですよ。よく見てますね。


イル・メグは第一世界版のクルザスとのことですが、クルザスでは竜詩戦争があったのに対して、イル・メグではヒトがいなくなってみんな寂しがっていたのが興味深かったです。

石川
蒼天のシナリオでは人とドラゴンが対立していて、最終的には和解しました。第一世界のイルメグでは人が完全にいなくなってしまっています。これはシナリオチームが意識して歴史の違いを描いたものです。


アーモロートはトマス・モアの「ユートピア」やシェイクスピアの「テンペスト」といった文学作品から名前が使われていますが、他にも参考にしたものはありますか?

石川
ネーミングについてはシナリオチームと世界設定班で協力して作っていて、アーモロートのエリアや都市をどうやって表したらいいか一緒に考えました。誰も働かなくてよくてみんなが幸せな理想郷、ユールモアは独自の楽園のビジョンを持っていましたけど、それとはまた違うものでした。
アーモロートはもっと完全な社会で、それを表現するにはどんな名前を使えばいいだろうと思って、トマス・モアのユートピアを見て「アーモロート」がいい、となりました。




漆黒の重要な要素の一つは水晶公です。グ・ラハ・ティアを再登場させるというのはいつ決まったのでしょうか?

石川
漆黒のシナリオを書き始めた時には決まっていました。
もちろん、最初にクリスタルタワーシリーズが実装されてその結末が描かれた時は、チームで「いつかまた再登場させたいね」という話はしていたのですが、それがいつになるかは決まっていませんでした。
吉田さんから漆黒のアイデアが出た時に、シナリオの中心となる仕掛けを何にしようかとなって、彼を再登場させようということになりました。


結晶化した手など、水晶公のデザインはどのように決まったのでしょうか?

石川
水晶公のデザインについては、彼がどうやってストーリー上あのような立場になったか表したかったので、クリスタルタワーと一体化して体が結晶化し始めていると伝えました。
体のどこを結晶化させるか決めるとき、首と腕にタトゥーがあったのでそこは隠したい、となりました。

鈴木
石川さんから顔を隠してほしいという要求があって、そこが難しかったです。
普通は3Dモデルではライティングを使ってハイライトや影を出すのですが、水晶公では意図的に暗くして顔がわからないようにしました。


初めて水晶公を見たとき、闇の世界で結晶化したネロを思い出しました。

石川
ネロと水晶公の結晶化の理由はちょっと違いますが、クリスタルタワーの影響を受けていて、「前も見たことある!」とプレイヤーに共通点を感じてほしかった要素です。


漆黒のカットシーンでは、キャラクターの表情が以前より改善されていたように思います。これは大変だったのでしょうか?

石川
カットシーン中のプレイヤーのモーションは、紅蓮の約1.3倍に増えています。カットシーンでどんなことに力を入れたかについては開発パネルでお話しますが、パネルに入りきらなかったことをここで紹介します。
第一世界では光の氾濫があって常に上から光が差しているので、太陽や影の動きがなく、時間の経過がわかりません。これを活用して、カットシーンでは照明がキャラクターにちょうどよく当たるように調整できました。

鈴木
FF14では天候や時間を含め、全てはリアルタイムで動いています。それがのゲームのセールスポイントの1つです。
でもアートチームの観点では、表現のクオリティを上げるのが難しくて、例えば夜で特定のアングルから光が差していればすごく美しいシーンでも、昼間で晴れていると雰囲気が壊れてしまったりする場合があります。
漆黒ではカットシーンを作る時に空の明るさを気にする必要がなくて、視覚的な要素をよりよく表現するために照明の調節ができました。

石川
でも闇の戦士が夜を取り戻してしまったので、もうできなくなってしまいました!


吉田さんがファミ通のコラムで、FF14のグラフィックスのパイプラインが古くて、開発チームはいろいろなトリックを使って見栄えをよくしようと努力している、ということを書いていました。どんなことをしているんでしょうか?

鈴木
そうですね、見た目をよくするためにマニュアルでやっている部分があります。
些細な例かもしれないですけど、キャラクターに着脱可能なフードがある場合、今のテクノロジーならそれをモーションで処理することは難しくありません。でもリアルタイム、特にFF14でそれをするのは結構難しくて、フードありとフードなしのキャラクターモデルを別々に用意して、自然でシームレスに見えるように手動で切り替えています。
もう1つの例は、水晶公の顔の影です。ローテクですが、周囲に溶け込み自然に見えるようかなり手作業で調整しています。


「ロンカの水蛇」関連のクエストのインスピレーションはどこから来たのでしょうか?

石川
あれはシナリオライターの1人が長年温めてきたものです。
シナリオチームと世界設定チームがあるんですが、その中の新メンバーの1人のアイデアで、ボツになってもまた書き直して持ち込むというのを彼女が何回も繰り返していました。

大人気でしたよ!

石川
ちゃんと伝えておきます!