2018/11/17「ファンフェスティバル2018 in Las Vegas」での世界設定パネルです。
全編英語なため、内容を翻訳しました。
前半は、世界設定本第2弾/紅蓮での歌詞付きBGM/5.0のタイトルについて 等です。

後半記事はこちら → 織田さんQ&A / みんなで世界設定(ヌシ)を作ろう



公式アーカイブ動画 https://www.twitch.tv/videos/338183730

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まず自己紹介から。マイケル・クリストファー・コージ・フォックスです。いろんなことをやってます。
蒼天では世界設定担当ということになっていましたが、織田さんがメインシナリオライターになったので、私にその肩書きが使えなくなりました。


基調講演では Translation Direction という名前が付いてたけど、
こんなのは肩書きじゃなくただの名詞では?
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ということで、翻訳ディレクターで英語ローカライズリードというわけでもない時々世界設定の手伝いをしてる(ついでに歌う)マイケル・クリストファー・コージ・フォックスです。
ゲーム開発自体はずっとFF14を担当しているので、スクエニでの過去の声の出演作品を紹介しましょう。
多くのプロジェクトで、予算やスケジュールの問題だったり、忘れたものがあったりということで、ローカライズや開発チームの人がボイスを担当しています。
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地球の歩き方DS ニューヨーク』スクエニはこういうゲームも作ってました。
英語がわからない人でも、画面をタップすると音声が流れる機能があるわけです。
きっとニューヨークのどこかで誰か日本人がトイレを探して「Where is the bathroom?」って僕の声を流していることでしょう。


FF14でも歌だけではなく、ゲーム内のガヤでよくローカライズメンバーが出演しています。
これは1.0のオープニングで、自分が初めてFF14で担当したボイス。
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右端のこの人です。
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世界設定本の第一巻を出した後は「良かったけどすごく大変で~・・・」なんてごちゃごちゃ言ってましたが、第二巻です!
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まず、いろんなデータを紹介します。
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・ページ数:304(第1弾と同じ)
・単語数(文字数):
  日本語:約325,000(2冊合計:725,000)
  英語:文字数約950,000(計2200万)/単語数158,000(計365,000)
 これは小説のFifty Shades of GreyとFifty Shades Darkerを合わせた量と同じです。
 夜に彼氏/彼女の耳元で「ひんがしの国の農業は・・・」ってささやくのに最適。
・前回同様、ゲーム内からのコピペはなるべく避けています。
 80%が新しいか過去に少ししか使われていない内容です。
・完成までにかかった期間:5ヶ月
・協力者数: 翻訳者5人、チェック者3人、QAテスター複数。多くの人が力を合わせて完成しました。
・Must needsという表現を使った回数: 3回。かなり減らしました。
 パッチがリリースされる度に「これ間違ってませんか?」って報告がプレイヤーから来る。
 (ゲーム内でこのフレーズを使うNPCが多い。文法がおかしいように見えるが、古英語の表現)
・後付け設定:1つだけ。後付けで変更するのは基本的に嫌いなんですが、第1巻でダルマスカについて語っているところで、ほんとはナルマスクのはずで、これは織田さんのせいにしておきます。
・明らかなGame of Thronesのネタ:覚えている限りでは1個。微妙なのはいっぱいありますが。
・セクシーゼノスのイラスト数:到底足りない。
 でも半ページ分くらいのがあります。ファンはみんなセクシーなゼノスを見たがってる。


では実際の本の中身について。
まず今回とても楽しみだったのは、このリーヴプレートと聖人のストーリーを出せたこと。
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リーヴプレートは私がFF14のプロジェクトに加わって最初の頃に作ったものです。1.0ではゲーム内の大きな要素になる予定だったので、リーヴプレートとそれぞれのストーリーを50種類くらい作っていました。
これが実際に使っていたファイルで、作成日を見ると2006年9月になってます。これだけ長い間私がFF14に関わっていて、そしてずっと埋もれていた内容なわけです。今回本に載らなかったものも、またゲーム内に追加していくので今後見れる機会があります。


「最後の群民」と「ササモの八十階段(英語名:ササモの八十の罪)」。
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4年前くらいに、面白いストーリーがあるからそのうち紹介するよ、と言ってそのままになっていたやつ。ついに出せました。
何故「ササモの八十の罪」という名前なのか、ササモに何があったのか、丸1ページ使って説明されています。
「最後の群民」は、まず私が英語で元ネタを書いてから、しょぼい日本語に訳して、織田さんに渡してきれいな状態にしてもらいました。


クロ・アリアポーはミニオンのテキストでは10歳って書いてあったはずなのに、今回の世界設定本では13歳になってて、4.4でタイムワープでも起きたのかと思った人もいるかもしれないけど、これは私が間違えただけ。すみませんでした。
開発資料に日本語で「10代」と書いてあったのを、「10歳」と読み間違えました。すでに修正済です。
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日本語版のEncyclopaedia Eorzeaでは、NPCの名前の下に年齢や種族が書いてありますが、英語版では基本的にそれらの内容は本文に入れて、名前の下には代表的なセリフを書いています。
オトヤ・ツルギはまだゲーム内で一言もしゃべっていないので、何を書くか困りました。オトヤはハクロウの親友の1人で、たまにハクロウと一緒にカットシーンに出てきますが、隣にいるだけで何もしてません。これを書く1週間前に、ローカライズチームでB級映画を見るランチでRoller Bladeという80年代の映画を見ていて、それに出てくる人たちが「Yea, verily.」って言ってて面白かったのでそれをパクリました。
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アリアはもともと名前と年齢の下にいい文章がなくて、出版の1週間前くらいに急いで「趣味:絵を描くこと」が追加されました。英語の本文では、ダークな感じの流れからいきなり「絵を描くのが好き」と繋げるのもおかしいし、レイアウトも今更変更できなかったので、これをそのまま異名としてThe Painterとして採用しました。




第一弾では間違いがいくつかありましたが、今回は0個です。
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前回はテスターが何度もチェックして、間違いは全部直してリリースしたつもりでしたが、発売翌日に公式フォーラムに大量のバグ報告がありました。その後毎日、朝起きてフォーラムを見ると「また10個バグを見つけました」と書いてあって、投稿者が毎回同じAnonymooseっていう人でした。

今回はバグはありません。なぜか?
秘密兵器として、このAnonymooseさんを雇ったからです!
ステージへどうぞ!
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実は1個だけ間違いがありました。わざと残したんじゃないかな。
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世界設定本の話から、ゲームの話に移りましょう。
最新パッチのPrelude in Violetですが、なぜこのタイトルなのか?
実は4.5の青魔道士のヒントになっていました。紅蓮は赤ですよね。
赤+x=紫
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これは後から思いついたのではなく、本当です。


「何かユーザーが見つけていない隠し要素はありますか?」と質問されることがありますが、全部解析されてしまうのでありません。
一番面白い隠し要素はゲーム内に実装されないまま終わるやつです。
極リオレウス(英語Rathalos)のアチーブ名は、2000年代初期にあったバンド名Los Lonely BoysとかけてRathaLos Lonely Bossにしたら面白いんじゃないかと思ったんですが、カプコンに確認に送ったら「翻訳ミスですか??」と返ってきたので使えませんでした。
普通にExtreme Rathalos Hunterに戻しておきました。
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実は、テキストコマンドは一部見つかっていないものがあります。011 
この辺は日本語版と英語版での名称の違いから来ていて、両方とも同じ効果です。

この他に隠しコマンドをこっそり入れているものがあります。
 /fistbump → /brofist
 /boxstep → /2legit

※ /brofistは英語クライアントで使用可、boxstepエモートは現状では中国版クライアントのみ入手可

吉田さんにバレるまでは使えます。どうせ今忙しくて見てないだろうから。


オメガのアルファ編3層BGMの歌詞をここで公開します。
今回のレイドシリーズは英語ではDeltaScape、SigmaScape、AlphaScapeだったので、それ繋がりでタイトルをeScapeにしました。いいアイデアでしょう。
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宇宙のシーシャンティ(船乗りの歌)みたいな感じにしたかったので、いろんなシーシャンティを聴いて、それっぽく作ってみたのが前半の部分。そこから段々と自分の誕生からの運命を自覚し、ヒカセンと対峙することでその運命からついに自由になろうとする、そんな内容になってます。

祖堅さんの曲では、全てが繋がって感じるように、共通のフレーズやメロディが使われていることがよくあります。
歌詞を作る時とかもできるだけ同じようなことをしていて、海や水や航海の話なので、リヴァイアサンの歌詞と共通の単語を使用したり、コーラスの歌い方が似たような雰囲気だったりと共通点があります。

4.0では他に3つ歌詞付きの曲があって、全て日本語の歌詞です。ただ、途中で英語が出てきます。全部英語の歌詞の場合は最初から私が書くんですが、今回はまず各シナリオライターが日本語の部分を書いて、じゃ残りの部分を英語で埋めてねって渡されました。日本語の下書きがあってそれを訳すのかと思ってたけど、そうじゃなかった。
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「天つ風」は白虎がすごく男性的な感じで歌っていて、彼のフォロワーが後ろで唱和しています。「月下彼岸花」では女性パートはツクヨミが自分自身について歌っていて、男性のコーラスは他人の視点から彼女の運命について歌っています。「千年の暁」の女性パートは朱雀で、男性パートはテンゼンが2人の関係について歌っています。
なので、そういうのを考慮して、日本語の歌詞を書いてもらってから英語を埋めて、その後に翻訳版を作って・・・みたいなことをやっているので、大変ではありましたが、どれも印象に残った曲でした。


次の拡張のタイトル「漆黒の反逆者」は直訳すると Jet Black Traitors(Villains) になります。ここからどうやって Shadowbringers になったのか?
法的には紅蓮のリベレーター Stormblood と似たような考え方をしています。
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まず、Heavensward、Stormbloodと来たので、ここまでと同じく2つの単語を組み合わせたもので行きます。パッチ名は長くてもいいのですが、拡張の名前はシンプルにしたいので。

Redという単語は、法的には何も意味を持たないことになっています。だから紅蓮でRedは使えませんでした。Redなんとか という造語を作っても、商標を取ることはできません。
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今回新しく学んだんですが、NightDarkは法的には同じ意味で、Who's Afraid of the Darkという映画があるとWho’s Afraid of the Nightという名前の映画を新たに作ることはできません。
Dark Knightという映画が既にあるので、法的にはNight Kdarkという名前の映画は作れませんね。
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そんな感じでいろいろと考えて、最終的にShadowbringersに行き着いて、ゲーム内のいろんなテーマに合うタイトルになりました。


2.0の時から、各拡張の1年前くらいに開発チーム内でモンスターデザインコンテストが行われています。アートチーム主催で、数百人いるFF14のチーム全体に対してコンテストがあって、もしいいアイデアがあればゲーム内に採用されるわけです。

過去に採用されたのはこういうものがあります。
右下はアートチームとなってますが、普段は背景を担当している人。
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これが私が今回のデザインコンテストで応募した作品。
まだ採用されたという連絡は来ていないけど、きっと5.0で出てくるでしょう。
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